私の忘れられない焼きそばの店

「大松」との出会い

JR京都線 千里丘駅東口から徒歩5分。お店の名前は「大松」(だいまつ)

今から30年近く前、私がまだ幼稚園だった頃我が家で店屋物と言えば、家計にやさしい大松さんのバッテラとかたい焼きそばでした。私はこの2つが大好きで、大松さんの配達が来た時のわくわくした気持ちを今も忘れられません。

「かたい焼きそば」はパリパリとした歯ざわりの揚げ麺で、その上にあんかけがかかっていました。皿うどんによく似ています。「かたい焼きそば」のほかに「焼きそば」というメニューもありました。これは、普通の焼きそばだったようです。

20年の時を経て

20年以上経ったある日、親元を離れて就職した私は、自宅へ帰る途中、あまりの懐かしさに一人で店ののれんをくぐりました。

20年前と変わらず、店の真ん中に大きな水槽。黒鯛らしき魚がゆらゆらと泳いでいるところまで昔のままでした。

注文したのは、もちろん「かたい焼きそば」。味も昔と変わっていません。ぺろりと平らげてすぐにお皿は空になりました。

永遠の別れ

そう心に決めて店を出てから数年経ち、再び通りかかった時、お店は工事中でした。

楽しみに工事中の店の前を通り過ぎ、さらに数ヶ月たった時、そこには「○○クリニック」という看板がかけられていました。

信じられませんでした。ショックでした。どうしてもっと通っておかなかったんだろうと悔やまれました。

大松さんの「かたい焼きそば」は、兄と私の懐かしい思い出です。

おしまい