男性名は漢語や大和言葉を使う傾向が強いようです(「勇気」「翼」など)。欧米の男性名を使う例は、ほとんど見られません。
また、通常良く用いられる名前(「ひろし」や「まさひこ」など)を使う傾向も、昔と比べれば少なくなったとは言え、未だに主流であるのが現状です。
女性の場合も、大和言葉を用いた従来通りの命名が主流ではあります。しかしここ最近、それが大きく変化しようとしております。
それは、欧米圏の名前を漢字化あるいは仮名化した名前が増えたことです。そして、その例のほとんどが女性名です。例えばマリア(Maria)を「麻理亜」などとするのが良い例です。
平仮名で「れな」と称する場合もあれば、漢字で表記する場合もあります。
漢字で表記する場合は、「れ」と「な」の音を有する漢字を当てはめ、2文字で表記します。ただし、実際は「れ」を現す漢字は皆無であるため、「れい」の音を有するものを使うことがほとんどです。
具体的には、前者には「玲」「麗」「礼」を、後者には「奈」「那」「菜」を、それぞれ用いることが多いようです。このうち、訓読みになっているのは「菜」だけで、殆んどは音読みです。
「玲」の字は、「玉(宝石)を叩いたときの美しく澄んだ音色」を表しています。また、この字を使った漢語の一つに「玲瓏」という語があります。「玲瓏」は、古風な歌の歌詞に良く出て来る語ですが、次のような意味を持っております。
- 1.(トータル)[文]形動タリ
- 金属・玉などがさえた美しい音で鳴るさま。また、玉を思わせる美しい声の形容。「
顔に似合はぬ―たる美音で演説を始めた/くれの廿八日(魯庵)」- 玉のように美しく輝くさま。さえて鮮やかなさま。「
蜃中楼とは蜃(はまぐり)が吐出した気の中に―たる楼閣が…出現せるを申せし/蜃中楼(柳浪)」- 2.(形動)[文]ナリ
- 1.に同じ。「
玉のやうに―な詩人らしく見え/行人(漱石)」
個人的な俗解ですが、金属や玉(宝石)の美しい音色や宝石の輝く様は、 Lena の語源 Έλενη (ヘレネー)が持つ "brightness" という意味に相通じるとも言えます。明朗にして純白無垢な性格や容貌は、まさに彼女のために存在していたに違いない、と思うのです。
ともかく、清楚で純粋、かつ明朗な女性たり得ることは、男性はもとより、女性にとっても、ある意味理想的と言えるのではないでしょうか。大げさに言えば、雰囲気を明るくし、場を明るく出来るのです。誰だって「暗い人が良い」と思う人はいますまい。とかく女性は、常に美しくあるのが理想的です。例えば夫婦あるいは近所親戚などとの絆を深める上で、女性美は大きな力を発揮する筈です。それも、心身共に、宝石の如く「燦然と」輝き、周囲を照らすようなものが理想的と言えます。
女の子が産まれた際、そのような女性ととなるよう願う意味で、「れな」の名前に「玲」の字を当てはめることは、非常に喜ばしいことではないでしょうか。